大勢の人が集まり、設定されたテーマにそってさまざまなアイデアを出し、ブラッシュアップしていく「アイデアソン」。製品・サービスの開発や、業務トレーニングとして、有効な手法とされています。

とはいえ、実際のアイデアソンはどのように行うのが効果的なのでしょうか? 富士通が開催した『大ガッコソン!』をモデルに、アイデアソンの実例をお届けします。

アイデアソンのやりかた

  1. 頭をアイデアを出すモードに切り替える
  2. アイデアから余分なバイアスを取り除く
  3. 人ではなくアイデア中心でチームを作る
  4. チームに閉じこもらずいろんな人とコミュニケート
  5. プレゼンはギリギリまでシェイプアップする

What's "大ガッコソン!"

160328_gakkoson_logo.pngメディアを通して社会の課題を共有し、多様な人たちと共に解決を目指すイノベーション活動『あしたのコミュニティーラボ』。そのプロジェクトの一環として、学生、社会人を問わず参加できるアイデアソンが『大ガッコソン!』です。今回のテーマは「常識を覆せ、わたしの考えるみらいの大学」。学生、学校関係者、そして富士通の社員が横浜、神戸それぞれの会場に集い、2日間にわたって「未来の大学はこうなるんだ!」というアイデアを出し合いました。
本記事では、横浜会場の様子をレポートにまとめています。神戸会場のレポートはあしたラボUNIVERSITYでどうぞ。

1.頭をアイデアを出すモードに切り替える

160328_gakkoson_keynote.pngキーノートを行った大阪大学の柏崎礼生助教(左)、リディラバの代表理事・安部敏樹氏(中)、株式会社富士通研究所の原田博一氏(右)。

人間は、日々さまざまなことをその頭脳で処理していますが、多くの人が普段行うであろう「課題を処理する」頭のモードと、「アイデアを出そうとする」モードは異なるものではないでしょうか。アイデアソンを始める前に「アイデアを出そう!」と意識を切り替えることが大切です。

『大ガッコソン!』では、最初に頭を柔らかくするためのインプットとして、3つのキーノートを開催。各ノートにはメインテーマである「大学」という共通点はありますが、「大学は一部を除いて解体されるんじゃないか(柏崎氏)」「設問ができたらあとは解くだけ、いい課題を設定できたら答えはおのずと見つかる(安部氏)」「未来を定義することで、いま行うべきことを導き出せる(原田氏)」など、刺激的なトークが並びました。

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続いて、「大学から連想できるワードを並べる」「写真を見て浮かんだイメージをメモして貼る」など、小さな思いつきをどんどん出し、見せ合うイベントが続きます。こうすることで、「アイデアを出す」モードへ頭をシフトさせるわけです。

2.アイデアから余分なバイアスを取り除く

160328_gakson_double.jpg会場内にはテレカンファレンスロボ「Double」も。『大ガッコソン!』は横浜会場と神戸会場で同時に開催されていますが、このツールでリアルタイム交流が可能になっています。

アイデアソンの参加者は、アイデアをお互いにぶつけ合うことでブラッシュアップしていきます。このときに意外と邪魔になるのが、「誰の発言か」というバイアス。キャリア、性別、年齢といった属性は、発言に先入観を与えることがあります。

学生と社会人を交えて行う『大ガッコソン!』では、このバイアスを取り除く工夫もありました。短時間で相手を次々と入れ替えながらアイデアを話す/聞くをくり返すことで、アイデアの発言者を気にしなくなるように、意識を変えていくのです。

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その後、参加者はそれぞれ「これだ!」と思うアイデアを紙に書き出し、誰が書いたのかわからないよう並べていきます。この状態で投票を行い、得票数の多いものをピックアップしていくことで、純粋にアイデアを評価します。また、投票ではすくいきれない「尖った」アイデアは、自薦・他薦でピックアップ。最終的にアイデアを13個にまで絞り込みます。

3.人ではなくアイデア中心でチームを作る

160328_gakson_teambuild.jpgアイデアが選ばれたら、あらためて発案者が名乗りを上げ、チームの最初の1人になります。

こうして選ばれたアイデアを中核に、参加者それぞれが任意でチームを編成していきます。ルールは「なるべく学生/社会人の両方が混ざること」のみ。

自分が気に入ったアイデア・チームに向かう人も入れば、「絵を書ける人を探しています」といった呼びかけに応えてチームに入る人もおり、多様なチームが誕生しました。

4.チームに閉じこもらずいろんな人とコミュニケート

160328_gakson_rapidproto.jpg会場に用意された紙やテープ、人形などのおもちゃを使ってラピッドプロットのアイデアを練る。実際に触れる対象があることで、コミュニケーションがしやすくなります。

アイデアをもとに、各チームは即席でプレゼン資料(ラピッドプロット)を作成していきます。このときも「使えるものはなんでも使ってよい」というアドバイスをもとに、会場のあちこちで即席のアンケートがとられたり、他チームや運営スタッフを巻き込んだりしながらの作業が続けられます。

160328_gakson_advice.jpg柏崎先生も混じっての意見交換。「今の学生は、こんな機会があってうらやましい妬ましい!」とは先生の談。

2日目になると、私物から資料になりそうなもの(書籍や雑誌はもちろん、コミックも!)を持ち込む参加者や、PCで論文をチェックする参加者など、それぞれのスタイルでアイデアのブラッシュアップを行うように。あわせてプレゼン用の資料作りも行われますが、王道のスライド資料を作成するチームだけでなく、演劇の台本や小道具を作り始めるチームもおり、それぞれが異なる発展を見せていきます。

5.プレゼンはギリギリまでシェイプアップする

160328_gakson_presentation.jpg1チームの持ち時間は発表3分+質疑応答3分。時間オーバー時は容赦なく打ち切られます。

2日にわたってひたすら頭と口と体を動かし、資料をまとめあげたら、アイデアソンもゴール間近。最後の発表プレゼンの場で、磨き上げたアイデアをアピールしていきます。プレゼンの形はスライドでも演劇でも朗読でもなんでもOKとされているので、スライドに交えて劇を挟むチームもいました。

総勢13チームの発表が終わったら、審査員による「最優秀賞」「優秀賞」と、参加者全員の投票による「参加者投票賞」、計3つの賞がピックアップ。「最優秀賞」「優秀賞」を獲得したチームは、さらにアイデアを磨き、決勝プレゼンへと進むことに。決勝プレゼンの様子は、明日お届けします。

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アイデアソンで参加者の意識はどう変わる?

2日間に渡って、ひたすらアイデアを出し、ぶつけ、練り上げたアイデアソン。参加してみれば、「アイデアを出す」という行為がどのようなものなのか、意識が変わります。今回、『大ガッコソン!』の参加者にイベントの感想を聞いてみました。

相崎さん(富士通社員)

160328_gakson_aisaki.jpgアイデアソンは過去にも参加したことがあるのですが、今回は「学校」という共有体験をベースにアイデア出しをするのが新鮮でした。
イベントの過程で感じたのは、アイデアは「育てる」ものなんだな、ということです。今回、私の提出したアイデアがきっかけでチームができたのですが、みなさんから「アイデアのここに共感した」「このアイデアから別のことを連想しました」と言ってもらうことで、自分の中であいまいだったイメージが固まっていったのを覚えています。

平野智久さん(慶応大学生)

160328_gakson_hirano.jpg参加するまで、アイデアは突然湧いてくるもの、というイメージを持ってました。でも、実際にアイデアソンをやってみて実感したのは、実生活だったり、日常の遊びや学びだったり、そういったなんでもないことが結びついて生まれるのがアイデアなんだ、ってことです。
今回は自分と考え方の近い、共感できそうなチームに参加してみたんですが、次の機会があるなら、デザインに親しい人などまったく違うバックグラウンドの人とアイデアを交わしてみたいです。

あしたのコミュニティーラボでは、『大ガッコソン!』をはじめさまざまなイベントを開催し、一般から広く参加者を募っています。自分のアイデア発想力を試してみたくなったら、『あしたのコミュニティーラボ』をチェックしてみてください。

あしたラボUNIVERSITY | あしたのコミュニティーラボ

(文/金本太郎、写真/大塚敬太・大崎えりや)