異次元のスピードです…!
量子コンピューターはものすごい高速で計算できると言われていますが、その実現はまだまだまだ先、とも言われてきました。でも今回グーグルが、2年前に購入した「世界初の商用量子コンピューター」の検証結果を発表し、「従来のコンピューターより1億倍以上速い」と言っているんです。そのコンピューターはカナダのD-Waveという会社が作ったもので、NASAのエイムズ研究センターに設置されていました。検証に使われたのは量子コンピューターが得意とされる最適化問題で、理論上はスーパーコンピューターの3,600倍の速度で可能とされていました。
量子コンピューターが高速なのは、通常のコンピューターが「1」か「0」のビットしか扱えないのに対し、量子コンピューターの量子ビットでは「1」「0」に加え「両方」(重ね合わせ)という、なんだかズルい状態がありうるためです。そんな欲張りな子供みたいなコンピューターを実際作れるまでには、まだ時間がかかるとされていました。
が、D-Waveは2007年の時点ですでに量子コンピューターの開発に成功したと言っていました。そのため専門家からも賛否両論があり、いろいろな研究者グループが、彼らの量子コンピューターが本当に量子コンピューターと言えるのか、理論通り高速なのかどうかを断言できずにいました。
そんな中、グーグルの研究チームがD-Waveの量子コンピューターを使ってみた結果をArXivに公開し、そのコンピューターは本当に量子効果を使っているとしています。彼らはD-Waveのコンピューターと通常のシングルコアのコンピューターを競わせる実験を行い、焼きなまし法という手法で最適化問題を解かせたのです。
通常のコンピューターは擬似焼きなまし法、量子コンピューターは量子焼きなまし法という手法を使いました。グーグルはこう説明しています。
量子焼きなまし法は、1,000近いバイナリ変数を含む問題のインスタンスに対し、従来の擬似焼きなまし法を大幅に超えるパフォーマンスを発揮したことがわかった。シングルコアで行った擬似焼きなまし法より1億倍以上高速だった。我々は、量子モンテカルロ法と言われる他のアルゴリズムも量子ハードウェアと比較した。これは量子システムのふるまいをエミュレートするために作られた手法だが、従来型のプロセッサ上で動作する。これらふたつの手法の間で、問題のサイズによるスケーリングは同等だが、こちらもやはり1億倍もの差を付けられるケースがあった。
なんか難しい言い方なのですが、要するにD-Waveの量子コンピュータが、普通のコンピューターより1億倍も高速にタスクを完了したってことです。
ただ、これですぐ手放しで量子コンピューターの実現を祝える感じじゃありません。まず、この論文はまだ査読されていません。またTechnology Reviewが指摘するように、グーグルの実験では従来のコンピューターにとって効率良いアルゴリズムが使われていませんでした。なので違うアルゴリズムを使えば、結果は変わってくるはずです。
というわけでまだ議論はありそうですが、グーグルがお墨付きを与えたというのは、D-Waveだけでなく量子コンピューターそのもの、そしてコンピューター全体にとって大きな一歩ではないでしょうか。
image by D-Wave
source: arXiv、GoogleTechnology Review>
Jamie Condliffe-Gizmodo US[原文]
(miho)